本年度JCJ賞、黒田清JCJ新人賞は、7月21日、選考委員会で別表のように決定した。
会議は新人賞の選考から始まった。性格の異なる候補作2点は比較が難しく論議に時間を要したが、次第に論点が定まってチョン インキョン(鄭仁敬)さんの『コバウおじさんを知っていますか/新聞マンガにみる韓国現代史』に一致した。
6回目の新人賞ではむろん、50回のJCJ賞の歴史でも初めての外国籍女性の受賞である。 JCJ賞は推薦11点からの選考。いずれも秀作、力作で論議が交錯したが、『水俣病50年』を大賞、『ひめゆり』を特別賞としたあとは順調に他の3作が決定した。
熊本日日の1年半にわたる企画と写真集には、地元で起きた世界史的大公害事件に、地元紙の責任と良心を賭けて取り組む姿勢が評価された。
ドキュメンタリー映画『ひめゆり』も13年をかけた大作。沖縄戦下のひめゆり学徒隊の悲劇は何度も映画化され、本も多く出ているが、生存者にとっては「語れない」「語りたくない」体験である。それを柴田昌平監督が丹念に聞き出し、美しい映像に昇華させることでまれに見るリアリティーを生み出した。
沖縄タイムスは05年、戦後60年企画として沖縄戦を掘り起こし、JCJ賞を受けたが、実はそ
の時点ですでに、「集団自決は軍命令ではなかった」とする歴史改ざん策謀に対する、批判を開始していた。
策謀派は「大江健三郎・岩波書店」を告訴し、文科省は教科書検定に介入したが、同紙の『挑まれる沖縄戦/「集団自決」問題キャンペーン』をはじめとする地元メディアの報道が世論をリードし、今では「島ぐるみ」の運動に発展している。 その沖タイの不退転の姿勢が評価された。
同じく新聞人による長期企画『「改憲」の系譜/9条と日米同盟の現場』(新潮社)は、共同通信が足かけ3年、200回にわたり配信した大型連載に、新しい取材を加えてリライトした本。 憲法9条をめぐる日米制服組や防衛産業界の思惑、集団的自衛権への安倍首相と法制局長官の対立など貴重な「秘話」も多いが、そうした矛盾や抗争の源流を、すべて戦後の憲法制定経緯にまでさかのぼって検証する立体構造でこのレポートは成り立っている。学者の研究とは違い、すべて即現場のナマネタであるところが魅力とされた。
『生きさせろ/難民化する若者たち』(太田出版)の雨宮処凜(かりん)さんの作風については、推薦委段階で強い支持と若干の疑問の声があった。書名に見られるように主張は直截であり、過激と取られるような表現もある。彼女は作家経歴はけっこう長いのだが、いわば「知る人ぞ知る」存在だった。それが広く知られるようになったのは、「ワーキングプアー」「格差」といった言葉が日常語化された最近のことではないか。自身がその経験をした「難民」の実情を、等身大で描いた印象は強烈である。
この雨宮作品と同じ領域には、今回最終選考では漏れたが、献身的な取材で実態を訴えたしんぶん赤旗の『ワーキングプアと偽装請負/非正規雇用労働者を追って』と、朝日新聞の『偽装請負/格差社会の労働現場』(朝日新書)があった。
同じく最終まで残った『外国人研修生殺人事件』(安田浩一、七つ森書館)も格差労働の国際版として注目された。国境をはさんでの差別問題は『中国残留日本人/「棄民」の経過と、帰国後の苦難』(大久保真紀、高文研)に詳述されていた。
放送の『消える産声/産科病棟で何がおきているのか』(中京テレビ)、『1枚の写真が…/泊事件65年目の証言』も好評だったが、選外に。
ほかに朝日新聞鹿児島総局の鹿児島県警による公選法違反でっちあげ事件スクープを評価する委員もいた。
(推薦委・亀井淳)