この本の「はじめに」で、去る1月、防衛「省」昇格を祝う安倍晋三首相の訓辞が引用されている。米国との集団的自衛権の確立から改憲まではほとんど距離ゼロだが、当時安倍はその可能性を信じて高揚していた。
9条を目の敵にして憲法の首を絞めようとする企ては、むろん安倍政権時代に始まったわけではない。むしろ戦後すぐの憲法制定や施行の経過の中にその芽は胚胎していた。
本の題に「系譜」、副題に「現場」の文字がある。新聞記者の書くものはいつも現場であり、生きた「人」の姿である。
それらを線で結ぶと系譜とか国際政治の歴史と広がりが見えてくる。朝鮮戦争、警察予備隊誕生、ベトナム戦争、在日米軍基地とその強化、湾岸戦争、9・11、アフガン・イラク戦争と自衛隊の「参戦」、北朝鮮の動向…。
米国の世界支配の野望に呼応して、「日陰の軍隊」といわれた自衛隊制服組の復権願望が頭を持ち上げ、兵器産業に活路を求める財界の欲望がからまる。
改憲の水脈は最初は水滴でも集まれば奔流とななり、大河にもなりうる。その流域の無数の分岐点や堰、橋に政治家や官僚などがいて、人と人との脈絡が国境を越えて形成された。
その具体的な出会いをそれぞれの現場証人が口語で語っている。後藤田正晴、橋本龍太郎、松野頼三など取材後に他界した人の証言が残り、また現存の政治家なども本音で語っているので、貴重な歴史記録とも言える。
この連載は陸自がイラクに派遣され、緊張感の漂う04年に企画され、「非戦の回廊」「この国の座標」として計200回配信された。
その記事を基に再取材、再構成した大部な書物だが、冒頭紹介の安倍首相の、わずか半年後の惨めな姿を目の当たりにするにつけ、60数年の改憲潮流の水圧の強さ、その中でうまく立ち回ろうとした野心政治家の危うい運命を思わざるを得ない。
07年度、JCJ賞受賞作品。
「改憲」の系譜 /9条と日米同盟の現場
共同通信社憲法取材班
新潮社 1400円(税別)